
『機動戦士ガンダム』の中でも圧倒的な存在感を放つシャアアズナブル。その名を聞けば「赤い彗星」としての活躍や数々の名セリフを思い浮かべる人も多いでしょう。
ところが、その裏には知られざる悲劇があり、本物のシャアアズナブルはかわいそうと語られることが少なくありません。入れ替わりによって奪われた未来、平凡な両親との穏やかな日々、そして突然の死亡――こうした背景がファンの心を揺さぶり続けています。
また、なんjでの議論や声優による演じ分け、さらにフルフロンタルとの違いなどを通して、本物と偽物の対比は一層際立ちます。
本記事では、シャアアズナブルの本物がなぜかわいそうとされるのか、その真実と最後の結末を徹底的に解説します。
記事のポイント
シャア アズナブルの本物はなぜかわいそうと言われるのか

入れ替わりによって奪われた未来

「本物のシャア・アズナブル」がかわいそうと言われる大きな理由は、キャスバル・レム・ダイクンとの入れ替わりにあります。
テキサス・コロニーで偶然出会った二人は、妹のセイラですら見間違えるほど容姿がそっくりでした。その外見の一致を利用し、キャスバルはジオン軍士官学校に潜入するため、本物のシャアの名前と未来を奪う計画を立てます。
実際の入れ替わりは偶然ではなく、キャスバルが仕組んだものでした。彼は本物のシャアの荷物に銃を忍ばせ、保安検査で足止めされるように仕向けます。その結果、本物はシャトルに乗り遅れそうになり、そこで「自分が代わりに乗る」とキャスバルが提案し、二人は入れ替わりました。
この時点で、本物のシャアは知らないうちに「復讐の駒」として利用され、その人生を失うことになったのです。
平凡な両親と過ごした穏やかな日々

本物のシャア・アズナブルは、特別な血筋を持たないごく普通の青年でした。
両親のロジェ・アズナブルとミシェル・アズナブルは、テキサス・コロニーで生活する一般市民で、レストランを経営しながら穏やかに暮らしていました。父は村の管理者も務め、地域社会に根ざした生活を送っていたのです。
・父:ロジェ・アズナブル(テキサス・ビレッジのチーフマネージャー)
・母:ミシェル・アズナブル(夫と共にレストランを経営)
・息子:シャア・アズナブル(明るく人懐っこい性格の青年)
キャスバルが「宿命」や「復讐」といった重たいテーマを背負っていたのに対し、本物のシャアは政治や戦争とは無縁の平凡な未来を夢見ていました。その日常が突然奪われたことが、彼の悲劇性を際立たせています。
本物の青年が死亡に至るまでの流れ

入れ替わりの後、本物のシャアは「エドワウ・マス」としてシャトルに乗り込みました。しかし、そのシャトルにはザビ家が仕掛けた爆弾が設置されており、爆発によって乗客と共に命を落とします。
彼は最後まで「友人を助ける」という善意から行動しており、自分が標的にされていることも、利用されていることも知らないままでした。
ここに至る流れを整理すると以下のようになります。
出来事 | 本物のシャア | キャスバル |
---|---|---|
テキサスで出会う | 偶然出会い友人となる | 復讐計画の機会を見出す |
入れ替わり | 荷物に銃を入れられ、保安検査で足止め | 「代わりに行く」と提案し潜入成功 |
シャトル爆破 | 何も知らずに犠牲となる | 生き残り「赤い彗星」として活動開始 |
この瞬間から、キャスバルは「シャア・アズナブル」として生き、本物のシャアは歴史から姿を消すことになったのです。
なんJで広がる「本物かわいそう」という評価

インターネット掲示板「なんJ」などでは、本物のシャアを「かわいそう」とする意見が頻繁に語られています。
理由は主に以下の通りです。
- 友人を信じただけで命を落とした
- 政治や戦争とは無縁だったのに巻き込まれた
- 両親のもとで平凡に暮らす未来を奪われた
ネット上では「本物シャアの人生があまりに理不尽すぎる」という共感が広がり、キャスバルの冷徹さと対比される形で「本物=かわいそう」という評価が定着しています。
声優の観点から見る「本物」と「偽物」

ガンダムシリーズの大きな魅力の一つは声優の演技にあります。本物と偽物の「二人のシャア」を演じ分ける点でも、声優の存在は重要です。
- 本物のシャアは、明るく快活で人懐っこい青年らしい演技
- キャスバルが演じる偽シャアは、冷徹で威厳ある口調
この対比が、視聴者に「同じ名前でも全く別人」であることを強く印象付けています。特に池田秀一さんによる「偽物のシャア」の声は、赤い彗星のカリスマ性を決定づけました。一方で本物の方は、あえて普通の青年として描かれることで、その悲劇性が際立つよう演出されているのです。
この「声の演技のコントラスト」もまた、本物が「かわいそう」と言われる理由の一つとなっています。
シャア アズナブルの本物がかわいそうと語られる理由と最後

彼は何をしたかったのか?理想と目的の変化

キャスバルが「シャア・アズナブル」として生きる中で、その目的は時代とともに大きく変化していきました。
最初の目的はただ一つ、父ジオン・ズム・ダイクンを死に追いやったザビ家への復讐です。しかし、一年戦争が進む中で彼の関心はアムロ・レイとの宿命的な対決、そしてニュータイプという新しい人類像へと移っていきました。
さらに『逆襲のシャア』では、アクシズを地球に落下させるという極端な計画に突き進みます。これは「地球を人の住めない場所にして、人類を強制的に宇宙へ移住させる」という理想を掲げていましたが、その裏にはララァを失った悲しみや、父の理想を背負わされた苦しみが隠されています。
彼の「何をしたかったのか?」という問いに対しては、
- 復讐心
- アムロとの決着
- 人類の革新という大義
が複雑に絡み合っていたといえます。
クズと呼ばれる行動とファンの評価

シャアはカリスマ的な人気を誇る一方で、ファンから「クズ」と呼ばれることも少なくありません。その理由は彼の行動にあります。
- ララァを戦場に連れ出し、結果的に死なせてしまった
- 自らの野望のために部下や民間人を巻き込んだ
- アムロやセイラといった大切な存在とも決して正直に向き合わなかった
このような冷徹さや自己中心的な一面が「クズ」と批判される要因です。しかし同時に、復讐と理想の狭間で葛藤し続ける姿が人間味を感じさせ、ファンからの支持を集めているのも事実です。つまり、彼は愛憎入り混じるアンチヒーロー的な存在なのです。
ガンダムにおける正体と仮面の裏側

「赤い彗星」と呼ばれたシャアの正体は、ジオン共和国の創始者ジオン・ズム・ダイクンの息子キャスバル・レム・ダイクンです。父の死後、ザビ家の追手を逃れるため「エドワウ・マス」と名乗り、後に本物のシャア・アズナブルの名を奪って軍へ潜入しました。
つまり彼の仮面は、単なる戦場の象徴ではなく「自分が誰であるか」という存在そのものを偽り続ける証でもありました。仮面の裏に隠れていたのは、復讐心と孤独に縛られた青年キャスバルの姿だったのです。
マスクを付け続けた理由とは

シャアの仮面には複数の意味が込められています。
- 実用性:ザビ家の目を欺くため、正体を隠す必要があった
- 噂作り:顔に火傷の痕があるという虚偽の説を広め、神秘性を高めた
- 象徴性:セイラに語ったように「過去を捨てるため」
この仮面は彼の武器であると同時に、自らを閉じ込める牢獄でもありました。素顔を隠すことで赤い彗星の伝説を強めましたが、人間としてのキャスバルが安らぎを得ることは永遠に失われたのです。
フルフロンタルとのつながりと違い

『機動戦士ガンダムUC』に登場するフル・フロンタルは「シャアの再来」と呼ばれる存在です。しかし彼はキャスバル本人ではなく、シャアを模した「器」として作られた人物です。
- フルフロンタル:ジオン残党軍の希望を背負った「象徴的存在」
- キャスバル(シャア):復讐と理想の狭間で揺れ続けた一人の人間
この違いから、ファンの間では「フルフロンタルは完璧すぎて逆に人間味がない」「シャア本人の方が欠点だらけで魅力的」と語られることが多いです。
最後に迎えた結末とメッセージ

『逆襲のシャア』で、シャアはアムロとの最後の決戦に挑み、アクシズを巡る戦いで激突します。二人は互いに譲らず、最終的に共に行方不明となりました。
この結末は「人類を導く」と豪語していたシャアの理想が、結局は個人的な復讐や孤独の裏返しに過ぎなかったことを示唆しています。彼の最後は、人類の未来を変えるという壮大な理想を掲げながらも、一人の人間の限界を描いた象徴的なものといえるでしょう。
死亡説と生存説に揺れる運命

公式設定ではシャアは『逆襲のシャア』で死亡したとされていますが、ファンの間では「生きているのではないか」という生存説も語られます。理由は、遺体が確認されていないこと、そしてその後の作品で「シャアの再来」を思わせる存在が登場しているからです。
- 死亡説:アムロと共にアクシズで消滅
- 生存説:その後の時代に影響を与え続けた可能性
この曖昧さが、シャアを永遠のキャラクターとして語り継がせている大きな要因です。
名セリフ「見せてもらおうか?」に込められた意味

「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」というセリフは、シャアを象徴する名言のひとつです。
この言葉には、冷徹な軍人としての自信と、敵を試すような余裕が込められています。単なる挑発ではなく「自分が選んだ道を確かめる」という決意の表れでもありました。ファンにとっては、赤い彗星のカリスマ性を強烈に印象付ける名場面であり、後世にまで語り継がれる理由の一つとなっています。
総括:シャア アズナブルの本物はなぜかわいそうと言われるのか?
本物のシャア・アズナブルが「かわいそう」と語られる理由は、彼自身の意志とは無関係に運命を奪われた点に集約されます。彼は戦争や権力闘争とは無縁の、平凡で穏やかな未来を夢見ていた青年でした。しかし、キャスバル・レム・ダイクンの復讐計画に巻き込まれ、名前も人生も一瞬で奪われてしまったのです。
記事全体を振り返ると、以下のようなポイントが浮かび上がります。
- 入れ替わりによる悲劇:キャスバルの策略で士官学校への未来を奪われ、命を落とすことになった
- 平凡な家庭の象徴:一般市民の家庭に育ち、本来は戦争に巻き込まれることのない存在だった
- 無垢さゆえの犠牲:友人を信じただけで、復讐計画の駒として利用されてしまった
- ネット上の共感:「なんJ」などで「本物シャア=かわいそう」と評され、同情の対象となっている
- 声優の演じ分け:明るい本物と冷徹な偽物の対比が、より一層悲劇性を際立たせた
- 偽物の成功との対比:キャスバルが「赤い彗星」として歴史に名を刻む一方、本物は名前すら残せなかった
このように、本物のシャア・アズナブルの存在は「無辜の民が戦争に翻弄される」というガンダムのテーマそのものを体現しています。彼が「かわいそう」と語られるのは、単なるキャラクターの設定にとどまらず、戦争の理不尽さを象徴する存在だからこそなのです。
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