
こんにちは。メガネが書くブログ、運営者の「mochan」です。
熊谷正寿氏の会見を伝える記事で、31年間もうけるという言葉を使ったことがない、という説明が気になりました。経営者として利益をどう考えているかという話と、一度もその言葉を使っていないという話は、少し違いますよね。
過去の発言を調べると、GMOの公式IR資料に、熊谷氏の回答として「まだまだ儲かる感触があり」と載っている対談が見つかりました。結論からいうと、会見の「もうかる、もうける」を一度も使っていないという説明は、字義どおりには過去の公開記録と整合しません。
ただし、それだけで利益第一の指示を出していた、意図的に事実と違うことを話した、とまでは言えません。2003年から2026年までの公開資料をたどり、実際の言葉と経営方針の説明を分けて見ていきます。
記事のポイント
熊谷正寿の「もうけると言ったこと無い」は本当か

まずは、何を否定した発言だったのかを確認します。そのうえで、本人の回答が載った対談、公式プロフィールにある連載名、過去のインタビューを順に比べます。
会見で否定したのは「もうかる」と「もうける」
2026年11月2日のITmedia NEWSによると、熊谷氏は不正アクセス問題に関する説明会で、31年間一度も「もうかる、もうける」という言葉を使ったことがないと述べました。
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見出しでは「もうける」が目に入りやすいのですが、報道された発言では「もうかる」も一緒に否定されています。過去に「儲かる」を使った記録があるかどうかも、今回の説明を確かめる重要な材料になります。
発言があったのは、説明会の第2部です。熊谷氏は1995年からインターネット事業に関わってきた歩みや、顧客の笑顔を目的とする考え方を語っています。不使用の説明に続いて、グループの8300人に確認するよう促し、顧客に喜んでもらうために良いサービスを作るよう伝えてきた、という趣旨を述べました。
つまり、発言の前後には「利益より顧客への価値を先に置く」という話があります。ただ、そこで選んだ言い方は、特定の指示を否定するだけでなく、言葉そのものを一度も使っていないと読める強い表現でした。
出典:ITmedia NEWSの会見記事。この記事での会見の確認は報道の採録に基づき、原音を独自に全編検証したものではありません。
2004年の公式資料に「儲かる感触」の回答

今回、最も直接的な使用例として確認できたのが、GMOの公式IRサイトにある第13期事業報告書の対談です。
資料には、2004年1月8日に日本証券新聞へ掲載された、大和総研の平野清久氏と熊谷氏の対談を収録したとあります。PDFの4枚目、紙面に印刷されたページ番号では3ページです。
右側の段で、平野氏はGMOが今後も収益を上げ続けられるのかという投資家の疑問を尋ねています。それに対する「熊谷」と明示された回答に、次の一節があります。
実にこれからが本番。まだまだ儲かる感触があり、
出典:GMO公式IR・第13期事業報告書(PDF、紙面3ページ)
その後の回答では、継続的な収益を得るインフラ事業と、収益性の高いメディア事業を併せ持つことを、今後の見通しの理由に挙げています。単に相手の言葉を否定して繰り返した場面ではなく、自社の収益への手応えを説明している文脈です。
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この資料が大事なのは、新聞の見出しに「儲かる」と付いているだけではないことです。会社が公開した対談の本文で、熊谷氏の回答として「儲かる」が記載されています。質問者の発言と取り違えないよう、紙面の発言者表示も確認しました。
2004年は、会見で語られた1995年以降の31年間に含まれます。そのため、「その期間に両方の言葉を一度も使っていない」という説明を、そのまま正確な使用歴として受け取るのは難しいです。
ここで分かるのは、公表された対談に使用記録があることです。録音そのものではありませんが、本人名義の連載タイトルだけよりも、発言内容を具体的に比較できる資料になっています。
夕刊フジの連載名にも両方の言葉がある
熊谷氏の公式プロフィールにも、「儲ける」「儲かる」の両方が登場します。著書・著作などの一覧にある、夕刊フジの連載です。
- 連載名:熊谷正寿の儲ける!儲かる!インターネット
- 掲載期間:2003年6月5日〜7月4日
- 掲載面:夕刊フジ11面
公式サイトに自分の名前を冠した連載として載っている以上、熊谷氏の公的な活動と無関係な言葉だったとは言えません。
一方で、連載のタイトルを誰が決めたのか、本人がその題名を口にしたのかは、このプロフィールからは分かりません。当時の新聞本文や命名の経緯までは確認できていないため、連載名だけを根拠に「本人がそう発言した」と結び付けることはできない、という違いは残ります。
だからこそ、前の節で紹介した2004年の対談回答を、言葉の使用を確かめる中心的な根拠として見ています。
2003年と2016年の発言は文脈も確認
ほかの取材記事にも使用例があります。ただし、何のためにその言葉を使ったかを見ると、収益を最優先する発言とは異なります。
ベンチャー通信の2003年7月号インタビューでは、起業を考える学生へのメッセージとして、熊谷氏は「儲かるか」よりも、一生続けても飽きない商売かを考えてほしいと話しています。
ここでは、利益への関心と、長く取り組める仕事かどうかを対比するために「儲かる」という言葉が使われています。「儲かるなら何でもやろう」と勧めた発言ではありません。
また、2016年5月2日のBiz Clipの記事には、熊谷氏の言葉として「お金をもうけたいということも考えていない」とあります。こちらは、お金もうけを目的にしていないという否定の文脈です。
この文章から「もうけたいと言っていた」と「考えていない」を落としてしまうと、意味が逆になります。言葉が出てくる事実を確かめることと、その人の考え方を読み取ることは、やはり分けておきたいところです。
| 資料 | 確認できる使われ方 | 意味の違い |
|---|---|---|
| 2003年・公式プロフィールの連載実績 | 「儲ける!儲かる!」を含む題名 | 本人の発話や命名とは限らない |
| 2003年・ベンチャー通信 | 儲かるかより、飽きない商売かという比較 | 起業の動機を説明 |
| 2004年・公式IR掲載の対談 | 今後の収益に手応えがあるという肯定的な回答 | 投資家の疑問に業績の見通しを説明 |
| 2016年・Biz Clip | お金をもうけたいとは考えていないという言葉 | 金もうけを目的とすることを否定 |
熊谷正寿の「もうけると言ったこと無い」の本当の文脈

過去に言葉が使われた記録はあります。では、熊谷氏が繰り返してきた経営上の説明は何だったのでしょうか。「使っていない」の対象が、単語なのか、事業を命じる理由なのかで見え方が変わります。
「儲かるからやれ」と言わない方針との違い

2018年の東洋経済オンラインのブランドコンテンツには、熊谷氏がインターネット事業を始めて23年間、「儲かるからやろう」と言ったことはないと説明した記事があります。利益は結果だという考え方を語る内容で、広告企画に掲載された本人の説明です。
さらに、2026年10月1日公開の先端教育オンラインの記事にも、よく似た言い方があります。こちらは9月15日の会議後の取材で、ロボット事業の収益を問われたときの回答です。
熊谷氏は、Windows 95の時代から数えて31年目に入り、仲間に「儲かるからやれ」と一度も言っていない、という趣旨を述べています。同じ回答では収益の必要性も認めており、利益が不要だという説明ではありません。
良いサービスで人の役に立ち、その結果として収益が生まれる。本人が説明しているのは、この順番です。
二つの説明は、確かめる対象が違います。
- 「儲かるという言葉を使ったことがない」:言葉の使用歴についての説明
- 「儲かるからやれと言ったことがない」:利益を理由に仕事を命じる方針についての説明
2004年の対談は、将来の収益に関する質問への回答です。「儲かる」を使った記録としては、今回の広い説明と整合しません。しかし、その回答だけで「利益を理由に社員へ仕事を命じていた」とまでは分かりません。
逆に、顧客を大切にする理念があるからといって、過去の言葉の使用が消えるわけでもありません。理念として何を言いたいかは理解できても、使用歴についての言い切りまで正確になるわけではない、というのが資料を並べたときの結論です。
今回だけではなかった過去の不使用発言
「儲けるという言葉を使っていない」という広い言い方も、今回の会見で初めて登場したものではありません。
ベンチャー通信の2021年10月号では、熊谷氏が創業から30年間、儲ける・儲かるという言葉を使ったことはないと述べた形で掲載されています。売上や利益、シェアは目的ではなく結果だという文脈です。
2026年1月27日のForbes JAPANにも、30年間「儲ける」という言葉を使っていないという本人の説明があります。良いサービスを顧客へ届けることを先に置き、仲間への確認を促す点も、今回の会見と似ています。
時系列にすると、2018年には「儲かるからやろう」という限定的な表現があり、2021年と2026年1月には言葉そのものの不使用を語る表現があり、2026年9月の取材では再び「儲かるからやれ」という限定的な説明が出ています。
ずっと同じ正確な文言だったわけでも、ある時点から一方向に言い方が変わったわけでもありません。顧客を先に考える姿勢を語る際に、広い言い方と、具体的な指示に絞った言い方が使われてきたことが分かります。
したがって、今回の謝罪会見で急に作られた説明だと決めつけるのも、過去に何度も掲載されているから使用歴として正しいと判断するのも、どちらも早いと思います。繰り返されてきた本人の説明と、実際に残る使用記録は、別々に比較する必要があります。
社内の言い回しが社外へ出たように感じた
ここからは、会見に対する私自身の感想です。
私は、普段の社内向けのコミュニケーションや言い回しが、そのまま社外向けの説明にも出てしまったように感じました。社内で共有している意味を知らない人が聞くと、強い違和感につながりそうだな、と思ったのです。
例えば、普段から「利益は結果」「まず顧客の笑顔」という考え方を共有している相手なら、「儲けるとは言わない」を、仕事の目的の話として受け取る余地があります。でも、外から初めて聞く人には、「本当に一度もその単語を使ったことがないのか」という事実の主張に聞こえます。同じ言葉でも、聞き手が補える前提が違うわけです。
これは、理念の共有を私が想像だけで置いているわけではありません。GMOの公式のスピリットベンチャー宣言は、理念の共有・徹底を重視し、夢、笑顔、感動といった言葉を掲げています。2018年の取材記事でも、熊谷氏は社員や子会社を「仲間」と呼ぶ考え方を説明していました。
その言葉の選び方から、私は、含蓄のある表現や抽象的な言い回しを好み、受け手に考えてもらうようなコミュニケーションを重ねてきたのではないか、とも感じました。一つずつ具体的に指示するより、抽象化した言葉を渡して、周囲に頭を使ってもらうイメージです。
ただし、私は社内のやり取りを見たわけではなく、熊谷氏がそういう意図で話してきたと確認できたわけでもありません。ここは公式資料で確認できる「理念を共有する姿勢」と、それを見た私の解釈を分けておきます。
私が気になったのは、会見ではその前提の共有を期待できないことです。「儲かるから仕事をするようには言っていない」と具体的に説明していれば、過去にその単語を使ったかどうかとは別に、経営の考え方として伝わりやすかったのではないでしょうか。
抽象的な言葉には、聞き手が考える余地があります。一方、事実を説明する場面では、何を指して何を否定しているのかが見えることも大事だと、今回の発言から感じました。
熊谷正寿の「もうけると言ったこと無い」は本当かの結論
過去の公開記録に照らすと、「もうかる、もうけるという言葉を一度も使ったことがない」という説明は、字義どおりには整合しません。特に2004年の公式IRに収録された対談には、熊谷氏の回答として「儲かる」の使用が残っています。
一方で、以前から本人が語ってきた「利益を出発点に仕事を命じるのではなく、顧客への価値を先に置く」という方針は、別の話です。その方針が社内で常に実行されていたか、今回の強い言い方が故意だったかは、公開資料だけでは分かりません。
私としては、経営理念への賛否より先に、「言葉の使用歴」と「その言葉で何を命じたか」を分けると、今回の引っかかりがはっきりすると考えます。過去の記録との違いは曖昧にせず、同時に、その違いから本人の内心まで決めつけない。そこまでが、今回の資料からたどれる答えです。
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